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犬の組織球肉腫

犬の組織球肉腫

組織球肉腫は樹状細胞由来の悪性腫瘍です。
大きく分けて局所性組織球肉腫と播種性組織球肉腫に分類されます。
この腫瘍は極めて悪性度が高く、急速に全身へ播種、転移します。

局所性組織球肉腫

播種性組織球肉腫

診断

組織球肉腫の症状は、腫瘍の発見、関節の腫脹や跛行、咳、元気食欲の消失、嘔吐、下痢、発熱など多岐にわたります。
そのため、全身を総合的に診ることが必要です。血液検査による全身のスクリーニング検査、腫瘍の細胞診、胸部レントゲン検査、腹部超音波検査、跛行がある場合には四肢のレントゲン検査をおこないます。
また、必要に応じて、CT検査を実施します。暴れてしまう等の理由から鎮静剤を使用しないと細胞診が困難な場合は、CT検査と同時に組織生検または細胞診をおこない、確定診断します。

治療

組織球肉腫は、今まで有効な治療法はないとされていましたが、2003年に米国で効果がある抗がん剤(ロムスチン)が報告され、現在では、早期発見し、積極的に治療をおこなうことで比較的長期延命が可能になっています。

局所性組織球肉腫
積極的な局所治療(主に外科手術)+抗がん剤(ロムスチン)

中央生存期間は128日ですが、関節周囲に発生した組織球肉腫は、断脚および抗がん剤の治療により中央生存期間は391日、遠隔転移がない早期の治療では中央生存期間は980日と長期生存が可能です。
関節周囲や骨に発生した場合、一般的な痛み止め(非ステロイド系抗炎症剤等)に反応しない非常に強い疼痛を伴うため、積極的に減容積する場合は断脚をおこないます。
断脚以外の方法で疼痛を緩和するには、ビスフォスフォネート製剤、オピオイド系鎮痛剤を利用します。

放射線治療

放射線治療は比較的効果が認められており、疼痛緩和にも有効ですが、局所の治療のみになりますので、全身への播種は制御できません。

播種性組織球肉腫

全身性の疾患のため、抗がん剤を用いた治療を中心におこないます。抗がん剤が効果を示した場合、中央生存期間は106日です。
必要に応じて、インターフェロンγなどの免疫療法を組み合わせることが可能です。
血球貪食性組織球肉腫は、進行が著しく早いため、積極的治療をおこなっても長期の延命は厳しいでしょう。
特に、貧血、血小板減少症、低アルブミン血症がすでにある場合、中央生存期間は1ヶ月以下と言われています。

※クリックで症例画像を表示

図1.胸部レントゲン画像(犬、W・コーギー、肺の組織球肉腫)

図2.CT検査(犬、W・コーギー、肺の組織球肉腫)

図3.組織球肉腫の細胞診所見(犬・バーニーズ・マウンテン・ドック)黄矢印で示すような大きな多核巨細胞が認められることもあります

主な腫瘍疾患