はじめに
猫の尿管外径は 1 mm、内径は約 0.4 mmと非常に細いため様々な理由で閉塞が生じます。
猫の尿管閉塞の原因は結石(98%程度がシュウ酸カルシウム結石)が最も多くを占め、他には狭窄、Dried solidified blood stoneなどがあり、またこれらが併発すること(例:結石と狭窄など)もあります。片側で尿管閉塞を生じると尿管/腎盂の内圧は上昇し、それぞれの径が拡張します。その後、腎血流量は低下して最初の24時間で40%程度にまで低下するとされています。
また、両側に尿管閉塞を生じると排尿ができなくなり、急性の腎後性腎不全を起こすため、早急に治療介入が必要となります。つまり、両側の尿管閉塞は緊急疾患であると言えます。
前述のように猫の尿管閉塞の最も多い原因は尿管結石です。内科療法は輸液やステロイド剤、α遮断薬(尿管の弛緩を目的)の投与などが行われますが、治療反応は乏しいことが多いです。そのため外科手術が推奨されますが手術方法は様々で難易度が高いものもあるため、適応の判断が難しく外科介入が困難な場合もあります。
臨床徴候
非特異的な症状が多く、元気・食欲低下や体重減少、嘔吐、腹痛などが認められます。
また、下部尿路の徴候(血尿、排尿障害、不適切な排尿など)は最大25%で認められます。
当院で手術を実施した猫の主な症状(203症例時点までの調査)は、食欲不振 89%、嘔吐 54%、元気消失 49%、血尿 13%、体重減少 12%でした。嘔吐が半数以上の猫で観察され、意外と下部尿路徴候は多くないのが特徴です。
診断
画像検査は腹部超音波検査が最も一般的であり第一選択となります。
腎盂や尿管の拡張の程度を評価することが可能で、閉塞部位の局在診断にも役立ちます。
また、結石自体を描出することも可能です。
より正確に結石の位置や数を評価するためにはCT検査(造影なし)が有用です。
松原動物病院では手術直前に最終的な評価としてCT検査(造影なし)を実施する場合が多いです。

腹部超音波画像:
拡張した腎盂と尿管、近位尿管結石(矢印)

同症例のCT画像:
近位尿管結石(矢印)
腹部X線検査で結石が確認できることもありますが、小さな結石やX線透過性の結石などは確認できない場合が多いです。そのため腹部X線検査で結石を認めない場合でも尿管閉塞を否定することはできません。
また、片側尿管閉塞の場合は腎数値上昇を伴わないことも多いため注意が必要です。
治療
内科治療
薬物療法・輸液療法
反応率や副作用の観点からα1受容体遮断薬やステロイドを使用することが多いです。他にはマンニトール、カルシウムチャネル遮断薬、グルカゴン、アミトリプチリンなどを用います。
内科治療単独での奏功率は15%程度(最大で約30%)とされており、70〜85%程度の症例で外科治療が必要となります。
輸液療法はあくまで脱水を補正するだけに留めておくべきであり、過剰な輸液は重大な合併症(過水和)の原因になるため注意深く投与する必要があります。
外科治療
松原動物病院では主に以下の術式を実施しております。
尿管膀胱新吻合術
閉塞部より遠位を離断し、拡張している近位尿管と膀胱を新たに吻合する方法です。
閉塞部/閉塞部より遠位が狭窄している場合に適応となります。
尿管長が短縮するため、通常は近位1/3以内の尿管での閉塞では適応となりません。
ただし、膀胱を前方に牽引して腸腰筋に固定したり、腎臓を尾側へ移動することで適応範囲の延長が可能です。
吻合部の裂開による尿腹や再閉塞などが合併症としてあげられます。
ETSUTT(尿管膀胱新吻合術の改良術式、超近位の尿管閉塞で実施)
当院院長の小山田が開発した術式です。
腎臓下降、尿管膀胱固定、腎臓膀胱固定の3つの減張処理と、吻合部を側側吻合にすることで術後合併症である吻合部の裂開や再閉塞のリスクが低減しました。
当院では適応症例に対しては積極的に同術式を実施しております。


図中2:腎臓と腹壁を固定 図中3:尿管と膀胱を固定 図中8〜10:近位尿管-膀胱の2層側側吻合
Oyamada et al.,2023より許可を得て掲載
尿管切開術
尿管結石の直上を切開し、結石を摘出する方法です。
単一結石のみによる閉塞の場合に適応となります。
細い径の尿管を切開、縫合するため術後の狭窄や縫合部の裂開による尿腹などが合併症としてあげられます。
経験的には尿管膀胱新吻合術と比べていずれ再閉塞する可能性が高いため、尿管膀胱新吻合術が可能な場合には当院ではあまり実施しておりません。
SUBシステム設置術
閉塞した尿管ではなくバイパスをつくることで尿路を確保する方法です。
複数の小結石による閉塞や高グレードの急性腎障害を受けた場合に適応となります。
手術時間が比較的短時間で済むため、緊急的な手術に向いています。
人工物を使用するため術後感染やバイパス内の結晶化による再閉塞、頻尿などの排尿障害が認められることがあります。
また、メンテナンスが必要となり1〜6ヶ月ごとの通院が生涯にわたり必要となります。
予後
上記治療(主に外科手術)はあくまでも閉塞を解除することが目的であり、これにより閉塞が解除され腎数値が改善しても、以降は慢性腎臓病として厳密な管理が必要となります。
定期的な血液検査や腹部超音波検査を推奨し、慢性腎臓病の病期に合わせた治療が必要です。
また、残存する腎機能が著しく低い場合は閉塞が解除されても腎数値の改善が認められない、もしくは改善が乏しい場合もあるため、適応症例には早期での治療介入が必要となります。
ご紹介の流れ
猫の尿管閉塞と診断された、または疑われる患者様を当院にご紹介の場合は、紹介フォーム(リンクが開きます)にて泌尿器外科をご指定ください。紹介フォームにより、診療情報を事前にご提供いただくことで、よりスムーズな医療連携が可能となりますのでご協力をお願いいたします。
なお、患者様の来院予約は別途必要です。当日・翌日のご予約をご希望の場合は診療時間内に下記番号までお電話をお願いいたします。2日後以降の日程でも差し支えない場合は、当院初診のご家族様にはこちらの新患様予約申込(リンクが開きます)からご入力いただくようお伝えください。翌診療日に当院よりお電話し新患様の来院予約を確定いたします。
患者様が当院に来院歴がある場合は、ご家族様から当院へ直接ご連絡いただくようお伝えください。
松原本院 ☎ 072-331-3493
大阪府松原市田井城2-1-7
天満橋医療センター ☎ 06-6354-4140
大阪府大阪市北区天満3-2-16
参考文献
・Veterinary Surgery Small Animal 2nd Edition (Tobias)
・Small Animal Surgery 4th Edition (Fossum)
・D. L. Clarke et al., Feline ureteral obstructions Part 1 : medical management, Journal of Small Animal Practice (2018) DOI: 10.1111/jsap.12844
・D. L. Clarke et al., Feline ureteral obstructions Part 2 : surgical management, Journal of Small Animal Practice (2018) DOI: 10.1111/jsap.12861
・K. Oyamada et al.,Extravesicular, two-layer, side-to-side ureteroneocystostomy combined with tension-relieving techniques for feline proximal ureteral obstruction: A retrospective study, Veterinary Surgery (2023) DOI: 10.1111/vsu.13977