松原動物病院 松原動物病院

学術コラム

皮膚科 2025.06.15
外耳炎

はじめに

外耳炎は、動物において一般的に認められる疾患であり、症状に伴うQOL(生活の質)の低下が著しい病気です。適切な診断と治療を行うためには、原因を体系的に捉えることが重要であり、その一助となるのがPSPP分類です。

 

PSPP分類の4要素は以下のとおりです。

1. Primary cause(一次原因)

外耳炎の直接的な原因となる疾患が含まれます。具体的には、アレルギー性疾患、免疫疾患、内分泌疾患、寄生虫性疾患、異物などが挙げられます。これらの多くは生涯、あるいは長期間にわたる管理が必要とされますが、寄生虫や特殊な真菌、異物による外耳炎については完治が可能とされています。

 

2. Secondary cause(二次的要因)

感染性微生物などが該当します。これらは外耳炎を引き起こす基礎疾患ではありませんが、炎症の進行に影響を及ぼす因子とされています。

 

3. Predisposing factor(素因)

耳道内の毛や湿気など、直接的な原因ではありませんが、外耳炎の発生リスクを高める要因です。

 

4. Perpetuating factor(持続因子)

耳道の石灰沈着や鼓膜の破裂などが含まれ、外耳炎を慢性化・持続させる要因となります。

 

このように、PSPP分類は外耳炎の診断と治療方針を立てるうえで、非常に有用な指針となります。

 

診断

外耳炎の診断においては、耳鏡による観察、耳垢の細胞診、および基礎疾患の探索が重要な要素となります。

 

(1) 耳鏡による観察

観察では以下の点を重点的に確認します。

 

・耳垢の貯留状況・異物の有無(特にノギなど)
・ミミダニなどの寄生虫の存在
・耳道の狭窄の程度
・腫瘤の有無
・鼓膜の確認

 

特に異物やミミダニは、除去や駆虫により完治が期待できるため、見逃しのない丁寧な観察が求められます。また、化膿性耳垢が見られる場合には、耳道腫瘤の存在が疑われることが多く、滲出液により視認性が低下して観察が困難となることがあります。鼓膜の確認も耳垢や狭窄の影響で難しいことが多いですが、治療方針の決定において極めて重要です。

 

(2) 耳垢の直接鏡検・細胞診

ミミダニの有無や、細菌・マラセチアなど外耳炎における二次感染の有無を確認します。

 

(3) 基礎疾患の探索

基礎疾患の特定は初診時には困難な場合が多いため、治療経過の中で鑑別診断を進めることが重要です。多くはアレルギー性疾患であるため、アレルギー性皮膚炎の診断アプローチが必要になることが多いです。

 

治療

外耳炎の治療には、内科的治療、内視鏡治療(ビデオオトスコープ、Video otoscope)、および外科的手術があり、症例ごとに適切な治療法を選択することが重要です。

(1) 内科的治療

内科治療の主な目的は、炎症の抑制および臨床症状の緩和、ならびに耳垢の排出促進です。細胞診の結果、感染性微生物(細菌や真菌など)が確認された場合は、抗菌薬の点耳薬を用いて感染制御を行います。 また、耳道洗浄は重要な処置ですが、痛みが強い場合や鼓膜の確認ができない場合は無理に行わず、最低限の洗浄に留めます。

 

(2) オトスコープによる治療

当院では、オトスコープを使用した耳道の洗浄や腫瘤切除を実施しています。特に、長期間経過した外耳炎に伴う耳垢は固着していることが多く、内視鏡を用いて初めて除去可能となることがあります。 また、内視鏡を使用することで、狭窄した耳道においても鼓膜の確認が可能となり、診断精度を高めることができます。

 

(3) 外科的治療

以下のような外科手術が適応となる場合があります。

・垂直耳道切除

・全耳道切除+鼓室胞骨切り術

・腹側鼓室胞骨切り術

 

これらの手術は、耳道腫瘍や内視鏡での改善が見込めない外耳炎・中耳炎に対して行います。特に、内科的・内視鏡的治療よりも短期間での改善やQOLの向上が期待される場合に選択されます。

 

松原動物病院で全耳道切除を実施した症例

幼少期から外耳炎が継続しており、中耳炎も併発していたため手術を実施しました。手術後は耳道の開口部(赤点線)がなくなりますが、耳介は残ります。

 

重度の慢性的な外耳炎に対して松原動物病院で全耳道切除術を実施した症例の外貌図(術後)。耳道の開口部がなくなっているのが分かる(赤点線)

 

松原動物病院で内視鏡での耳洗浄を実施した症例

ある症例では定期的に耳洗浄を行っていたにもかかわらず、臨床症状が改善しなかったため、内視鏡による耳洗浄を実施しました。最終的に鼓膜の確認も可能となり、経過は良好でした。

 

洗浄前 洗浄後
外耳炎で重度に耳垢が溜まっている耳道を、ビデオオトスコープで観察している画像。洗浄前。 外耳炎で重度に耳垢が溜まっているのをビデオオトスコープで観察しながら洗浄した犬。洗浄後、顕著にきれいになっている

 

 

ご紹介の流れ

外耳炎の患者様を当院にご紹介の場合は、紹介フォーム(リンクが開きます)にて皮膚科をご指定ください。紹介フォームにより、診療情報を事前にご提供いただくことで、よりスムーズな医療連携が可能となりますのでご協力をお願いいたします。

 

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