松原動物病院 松原動物病院

学術コラム

整形外科 2026.01.01
犬の橈尺骨骨折

はじめに

犬の橈尺骨骨折は、全骨折中のおよそ18%を占め、3番目に多い骨折です。

しかし、トイ犬種においては橈尺骨骨折の発生率はさらに高くなります。

その理由として、骨の形状およびミネラル密度の違いや、橈骨遠位領域の血管密度の低下など、力学的および生物学的な特性が考えられます。

発症の原因の多くは、低所からの飛び降りや落下が大部分を占め、骨折部位は橈骨遠位1/3に集中する傾向があります。

 

 

診断

視診・触診を行ったのち、X線検査にて骨折部の評価を行います。

また、骨折部位の毛刈りを実施し、開放創がないかどうかを必ず確認します。

X線撮影の際は必ず手根関節と肘関節を含む2方向(側面像+頭尾像)を撮影し、また、患肢だけでなく反対の健常肢も同様に撮影することが重要です。

 

治療計画

骨折の適切な治療を行うためには、骨折の正しい評価と適切な治療計画が必要です。

 

骨折治癒に影響する要因

① 力学的要因 :体重、他肢の損傷の有無、運動性、解剖学的に完全な整復が可能か

② 生物学的要因:年齢、開放骨折かどうか、軟部組織の状態や量、感染の有無、基礎疾患の有無

③ 臨床的要因 :性格、飼育環境、飼い主のコンプライアンス

 

治療法

① プレーティング

ほとんどの骨折に適応可能であり、本疾患に対して最も使われる固定法です。
ただし、開放骨折など汚染の可能性がある場合、プレーティングによる内固定は禁忌とされています。
トイ犬種の橈尺骨骨折におけるプレート固定は他の手技と比較して癒合率が高く、良好な成績が得られることが示されています。

 

② 創外固定

プレーティングが困難な症例や、開放骨折をしている症例に対して適応される場合があります。ただし、固定強度や長期安定性がプレーティングと比較して乏しいことや、正確な解剖学的整復が困難であること、また管理が煩雑であるといった欠点もあります。

 

③ 外固定

固定力が弱いため変形癒合または癒合不全のリスクが高く(83%)、また包帯による合併症が起こりやすいことから、単独での使用はほとんどされません。
ただし、若齢で、変位が最小限、尺骨の骨折がなく橈骨のみの横骨折であれば、適応となる場合もあります。
また、手術までの待機期間において、痛みや骨の変位を軽減する目的で使用することがあります。

 

④ 髄内ピン

トイ犬種は髄腔が狭く十分なサイズの髄内ピンが入れられないこと、また回転力に対する制御が弱く合併症の発生率が高いことから、適応となる症例が非常に限られています。

 

Q. プレーティングにおけるインプラントの選択条件は?

A. 選択条件は以下の通りです。
・スクリュー径:骨幅の40%未満
・プレート幅:骨幅を超えない
・プレート厚:部位や骨折の分類に応じて調節
・スクリューは片側に少なくとも2本4皮質、理想は3本6皮質
・スクリューは骨折線から離す

 

Q. トイ犬種の橈尺骨骨折においてダブルプレートを使用する目的は?

A. 初期の固定強度を担保することが目的です。
術後早期はインプラントへの負荷が大きいため、強固な固定を行う必要があります。
ダブルプレートを使用することで、断面2次モーメントが大きくなるため、骨折部を安定させることができます。
骨折が治癒するにつれて、インプラントへの負担は減少します。その一方で、強固な固定を長期間継続すると応力遮蔽が生じ、骨痩せが生じてしまうリスクがあります。
そのため、トイ種では骨折安定化に伴ってプレートを1枚抜去することも多いです。

 

 

予後

犬の橈尺骨骨折は早期発見と適切な治療により良好な予後が期待できます。術後2週間は安静に保ち、固定後1〜2週間でX線検査による評価を行います。一般的には術後2〜6週で仮骨形成が認められ、2〜3ヶ月以内に骨折線が消失していきます。
骨折整復後のX線検査評価は、「4Aアセスメント」に基づいて行います。

4Aアセスメント

① Alignment:骨片の整復(近位骨軸と遠位骨軸の傾きや骨軸の回旋の状況を評価する)

② Apposition:骨折部位の位置的相互関係(骨折片の整復の程度を評価する)

③ Apparatus:固定器具(適当な固定器具が適切に使用されているか否かに着目して評価する)

④ Activity:骨の生物学的活性(生物学的な活性を有した骨癒合が順調に行われているかを評価する)

 

松原動物病院で橈尺骨骨折整復を実施した症例

症例①  8歳、トイ・プードル、右橈尺骨骨幹部横骨折

左から治療前(側方像)、治療後(側方像)、治療前(前後像)、治療後(前後像)

 

橈尺骨骨折を松原動物病院で治療した例1。整形外科

 

 

症例② 0歳9ヶ月、トイ・プードル、左橈尺骨骨幹遠位部横骨折

左から治療前(側方像)、治療後(側方像)、治療前(前後像)、治療後(前後像)

 

橈尺骨骨折を松原動物病院で治療した例2。整形外科

 

 

症例③ 0歳9ヶ月 トイ・プードル、左橈尺骨骨幹遠位部横骨折

左から治療前(側方像)、治療後(側方像)、治療前(前後像)、治療後(前後像)

橈尺骨骨折を松原動物病院で治療した例3。整形外科

 

症例④ 1歳、イタリアン・グレーハウンド、左橈尺骨遠位部横骨折

左から治療前(側方像)、治療後(側方像)、治療前(前後像)、治療後(前後像)

橈尺骨骨折を松原動物病院で治療した例4。整形外科

 

ご紹介の流れ

橈尺骨骨折疑いまたは診断された患者様を当院にご紹介の場合は、紹介フォーム(リンクが開きます)にて整形外科をご指定ください。紹介フォームにより、診療情報を事前にご提供いただくことで、よりスムーズな医療連携が可能となりますのでご協力をお願いいたします。

 

なお、患者様の来院予約は別途必要です当日・翌日のご予約をご希望の場合は診療時間内に下記番号までお電話をお願いいたします。2日後以降の日程でも差し支えない場合は、当院初診のご家族様にはこちらの新患様予約申込(リンクが開きます)からご入力いただくようお伝えください。翌診療日に当院よりお電話し新患様の来院予約を確定いたします。

 

患者様が当院に来院歴がある場合は、ご家族様から当院へ直接ご連絡いただくようお伝えください。

 

松原本院 ☎  072-331-3493
大阪府松原市田井城2-1-7

 

天満橋医療センター ☎ 06-6354-4140
大阪府大阪市北区天満3-2-16