はじめに:外耳炎・中耳炎について
外耳炎は、耳介を含む外耳道に発生する炎症性の病態であり、多くの場合、基礎疾患に二次的に発症します。日々の診療において非常に一般的な疾患であり、罹患率は一般診療で4%から7%と報告されており、犬において10%から20%が罹患していると言われています。
症状としては、痒み、痛み、難聴、頭を振る動作、耳漏などがあり、動物の生活の質を著しく低下させてしまいます。また、慢性外耳炎の場合 50-80%に中耳炎の併発があるという報告もあります (外耳炎の詳細はこちらを参照)。(図1)
オトスコープは外耳炎/中耳炎において重要なツールとなっています。

(図1)中耳炎を患っている症例の頭部CT画像。
矢印で示す鼓室包(中耳)に、異常な貯留物が認められる。
はじめに:ビデオオトスコープ(オトスコープ:VOS)とは
オトスコープは、従来の肉眼で覗き込む一般的な耳鏡とは異なる耳用の内視鏡です。
オトスコープの特徴
先端のカメラと光源
カメラと光源がスコープ先端に位置します。これにより遠くから覗き込むのではなく、近づいて観察することが可能になります。(図2)
器械チャネル
鉗子、カテーテル、レーザーなどの器具を挿入して操作できる器械チャネルを備えています (図3)。
機器の選択
内視鏡の直径は、猫や中・小型犬には2.7 mmが、大型犬には4 mmが最適であるとされています。

(図2)
手持ちの耳鏡と比較し、オトスコープは物体に近づいてはっきり観察することが可能となる。

(図3)
器械チャネルを用いて、耳鏡で観察しながら精密な鉗子・チューブの操作が可能となる。


オトスコープを実施している様子
※動物の性格にもよりますが、外耳炎・中耳炎の症例では基本的に全身麻酔下で実施する。
オトスコープ(VOS)の適応
オトスコープは映像下で処置を行うため、診断と治療の両面において質を向上させることができます。基本的に全ての外耳炎において適応と言えますが、特に難治性の外耳炎や耳道腫瘤、中耳炎にて実施されます。
診断・観察
耳道内の評価
外耳道の炎症、滲出液、狭窄、増殖性変化、腫瘤性病変の有無を詳細に観察できます。
鼓膜および中耳の評価
鼓膜の状態を鮮明に観察し、穿孔の有無や中耳の評価を行います。鼓膜の動きや気泡の有無を確認することで、鼓膜が破れていないかを評価することも可能です。
炎症病巣の特定
従来の耳鏡では見落とされがちな、鼓膜周辺に固着した被毛や耳垢を観察できます。
正確なサンプリング
適切な部位(深部の水平耳道、または中耳)から、細胞診や細菌培養のための検体を採材できる。中耳炎が疑われる場合は、鼓膜穿刺後の鼓室胞からの培養検体採取が推奨されます。
治療・処置
オトスコープは器械チャネルを通じて多様な治療介入が可能です。
洗浄
全身麻酔下で、外耳道および中耳の徹底的な洗浄を実施します。洗浄液には、刺激を減らすために体温程度に温めた生理食塩水が推奨される。バイオフィルムを形成する細菌(例:Pseudomonas spp.)による外耳炎の治療には、この徹底的な洗浄が不可欠となります。
異物・固着物の除去
炎症の病巣となる鼓膜周辺の被毛や耳垢、植物などの異物を、鉗子や吸引カテーテルを用いて除去します。(写真1)
鼓膜穿刺
鼓膜を切開し、中耳腔にアクセスし、洗浄、吸引を行います。
腫瘤の切除・蒸散
鉗子を用いた腫瘤の摘出、またはダイオードレーザーを用いた切除、蒸散、止血が可能です。腫瘍の切除にレーザーを用いる手法は、低侵襲という利点があります。(写真2)
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| (写真1) 洗浄前 | 洗浄後 |

(写真2)
耳道内の腫瘤があり、耳道を閉塞している。
オトスコープ(VOS)のメリット
1. 診断精度の飛躍的向上
高倍率かつ鮮明なモニター画像により、診断の質を上げることができます。特に従来の耳鏡では安全かつ徹底的な除去が不可能であった鼓膜周辺の炎症の原因(固着物や被毛)を確認し除去できるのは大きなメリットです。
2. 飼い主様との情報共有
耳道内の状況をモニターで飼い主様と共有できるため、疾患の重症度や治療の必要性に対する理解と意識が高まり、治療コンプライアンスの確保につながります。
3. 低侵襲な治療
全身麻酔下でのオトスコープを用いた徹底的な深部洗浄やレーザー処置は、不可逆的な解剖学的変化がない場合に、外科手術(TECA/LBO)を回避する代替療法となりえます。
オトスコープ(VOS)に関連する合併症
オトスコープを用いた処置や、外耳炎の末期状態に対する外科手術には、それぞれ特有のリスクを伴います。
- 全身麻酔のリスク:
オトスコープ処置は通常、全身麻酔下で行われるため全身麻酔のリスクを伴います。 - 医原性の損傷:
稀ではあるが処置に伴い、鼓膜や耳道を損傷する可能性があります。特にレーザー使用時には、組織の炭化、壊死、または損傷を引き起こすリスクがあります。 - 神経症状(前庭機能障害):
中耳腔の洗浄時、内耳構造への機械的な刺激により、一時的な前庭機能障害(眼振、斜頸、運動失調)が発生する可能性があります。 - 症状の悪化:
処置後に症状が一時的に悪化する場合もあります。
ご紹介の流れ
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