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先天性心疾患

先天性心疾患

X線装置や超音波機器などの画像診断における急速な性能の向上により、最近では、犬、猫ともに様々な先天的な心臓病が報告されるようになってきています。その中でもしばしば認められる一般的な先天的な心臓病を以下に説明します。

動脈管開存症(PDA:Patent dactus arteriosus)

どんな病気?

犬でよく診断される先天的な心臓病です。
お母さんのお腹の中にいる時期に認められる動脈管という構造物(大動脈と肺動脈をつなぐ)はお母さんの体で十分に酸素を吸収した血液を大動脈へ短絡させています。つまり、その血液は機能していない赤ちゃんの肺を通過せずに大動脈へ流入します。生まれてまもなく、様々なメカニズムが関与し、動脈管は閉鎖します。これらの一連の流れがうまく進まず、生まれた後も動脈管が閉鎖しない病気がこの心臓病です。
特徴的な心雑音が聴こえることから、聴診による診断はとくに難しいものではありませんが、初期の段階では臨床症状を示さないことが多く、初回ワクチン接種時に偶発的に発見されることも多々あります。しかし、この病気の病態が進行した場合、聴診では明らかな心雑音を聴取出来なくなることもあるため、その他の各種検査が必要になってきます。 多くの場合、この病気は根治が可能であり、無治療の場合はこの病気をもつ約70%で18ヶ月以内に心不全で死亡するという報告も存在します。

なりやすい品種

犬および猫ともに発生しますが、犬で発生頻度が高いです。好発犬種として、ビション・フリーゼ、チワワ、コッカー・スパニエル、コリー、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、ジャーマン・シェパード、キースホンド、ラブラドール・レトリーバー、マルチーズ、ニューファンドランド、プードル、ポメラニアン、シェットランド・シープドッグ、ヨークシャー・テリアなどが挙げられます。

超音波画像:右傍胸骨大動脈起始部短軸像のカラードプラ法で認められたPDAの症例(犬)における
短絡血流を表すモザイクパターン

肺動脈弁狭窄症(PS:Pulmonary stenosis)

どんな病気?

先天的な右心室の流出路障害は犬において一般的なものであり、この病気は先天的な弁尖の癒合、肺動脈弁の低形成が認められるために生じる病気です。この病気はその解剖学的位置により、漏斗(ろうと)部狭窄、弁下部狭窄、弁性狭窄、弁上部狭窄に分類されます。重度になると、失神、呼吸が荒い、疲れやすいなどの症状が認められるようになり、突然死してしまう可能性もあります。

なりやすい品種

犬においては一般的ですが猫ではあまり認められず、好発犬種として、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、フレンチ・ブルドッグ、ビーグル、キースホンド、サモエド、ミニチュア・シュナウザー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ウエスト・ハイランド・ホワイトテリアなどが挙げられます。

(図7)超音波画像:PS症例(犬)において認められた肺動脈狭窄部後部拡張

(図8)超音波画像:PS症例(犬)における右傍胸骨大動脈起始部短軸像のカラードプラ法で認められたモザイクパターン

(図9)超音波画像:PS症例(犬)における上昇した肺動脈血流速

心室中隔欠損症(VSD:Ventricular septal defect)

どんな病気?

VSDは心室中隔の一部に穴が存在し、左心室-右心室間に血液の短絡を生じる病気です。その穴の場所により、Ⅰ型:漏斗(ろうと)部中隔欠損、Ⅱ型:膜様(まくよう)部中隔欠損、Ⅲ型:心内膜床(しんないまくしょう)欠損型中隔欠損、Ⅳ型:筋性(きんせい)部中隔欠損に分類されます(Kirklin分類による)。犬および猫ではⅡ型の発生が多く認められます。大きなVSDは顕著な左側の心臓の容量負荷をもたらします。VSDを介して短絡した血液は肺循環を通って左室に戻ってきます。左室はこの余分な血液を収容し駆出しなければなりませんが、これは心臓の拡大によってまかなわれます。大きなVSDは多量の短絡を引き起こし左側の心臓へ血液が戻って来る量を顕著に増加させ、この増加した血液量を収容するだけの十分な拡張が得られなくなり、左心室拡張期圧の上昇を引き起こし肺水腫に至ります。

なりやすい品種

好発犬種として、柴犬、ミニチュア・ダックスフンド、フレンチ・ブルドッグなどが挙げられます。猫における品種による発生率は不明です。

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