はじめに
肝疾患の多くは明らかな臨床症状を示さずに発生し進行していきます。
明らかに腫瘤性病変(mass:マス)を形成する腫瘍などでない限り、治療方針を決定し、肝臓で何が起きているのかの確定診断を下すには肝臓の組織を一部取ってくる肝生検が必要です。同じ「肝酵素値が少し高いだけ」に見えても、肝生検を実施すると全く異なる診断になるものもあります。生検以外の検査で絞り込むには限界があるのです。
特異的な診断がつかなければ、適切な治療を行うことはできません。
肝生検でしか診断できない疾患には、慢性肝炎・胆管肝炎・肝線維症・肝硬変・銅関連性肝炎・微小血管異形成(原発性門脈低形成)などが挙げられます。空胞変性など一部の疾患では細針による吸引生検(FNA)も参考になります。
肝生検において重要なこと
① 肝臓の顕微鏡的な構造を保ったまま組織を取ってくること
② 十分な量の組織を取ってくること
③ 肝臓の複数の部位から組織を取ってくること
④ 肝臓の肉眼的所見を得ること
腹腔鏡下肝生検 (ラパロ肝生検)とは
松原動物病院では、より動物にとって低侵襲に肝生検を実施する手段として、腹腔鏡による手術が可能です。
腹腔鏡(Laparoscopy:ラパロスコピー)の略でラパロ肝生検、とも呼んでいます。
画像:腹腔鏡下肝生検(ラパロ肝生検)の様子


小さな術創からカメラを挿入し、腹腔内で手術を行います。
もちろん、腹腔鏡がない環境下でも、開腹手術によって肝生検を行うことは可能です。
開腹手術でも、肝臓の肉眼像を確認し、肝臓の顕微鏡的な構造を保った状態で、十分な量の肝臓組織を取ってくることができます。
ただ、一般的には複数の部位からの採取はされにくいです。
また、肝臓を十分に肉眼で確認して手術を実施するためには、腹腔鏡と比べて大きく開腹する手術となり、日帰り手術では対応困難です。
腹腔鏡下肝生検の大きなメリットは、肝生検において重要となるポイントをすべて押さえながら、かつ低侵襲に実施が可能であることです。
術創は非常に小さく、数針程度です。
術創が小さいため、他に合併症や懸念されることがなければ、日帰り手術で対応しています。また、高画質なカメラを肝臓のすぐそばまで到達させることで、肝臓の肉眼所見も詳細に観察することが可能です。
画像:小さい術創(黄矢印)で手術が可能です。

画像:腹腔鏡下で観察している肝臓。辺縁が鈍化し、肝腫大が疑われる。

画像:腹腔鏡下で観察している肝臓。表面は不整に萎縮し、肝硬変が疑われる。

画像:採取された肝組織

適応症例
画像診断でははっきりとした病変がない、びまん性病変の疾患が主な適応です。
- 慢性肝炎
- 胆管肝炎
- 銅関連性肝炎
- 小葉離断性肝炎
- 肝線維症/肝硬変
- 肝臓の空胞変性
- 微小血管異形成(原発性門脈低形成)など
腹腔鏡下肝生検と同時に、肉眼的な血管異常や腫瘤性病変のスクリーニング、肝組織の造影時の評価のため造影CT検査も実施します。
造影CT検査では、先天性・後天性の門脈体循環シャント(PSS)を検出するために、腹部に加え胸部のCTを撮影することもあります。
術前検査
造影CT検査も腹腔鏡下肝生検も全身麻酔下で実施する検査であるため、麻酔前検査が事前に必要です。ご紹介元の病院様で実施していただくケースも増えていますので、お気軽にご相談いただければと思います。
必須の項目として、以下を実施しています。
- 一般的な血液検査(CBC、血液化学検査)
- 血液凝固系検査
- 肝機能検査(食前・食後2hrの総胆汁酸:TBAとアンモニア、場合により分岐鎖アミノ酸/チロシン比など)
- 胸部レントゲン検査
尿比重や尿pH、尿中結晶の評価のための尿検査も実施することが多く、特に低Alb血症を伴う場合はタンパク漏出性腎症の除外のために尿タンパク/クレアチニン比の測定も必要となります。
CT検査よりも更に低侵襲に肝臓を評価する方法として、超音波検査も欠かせません。
進行した肝疾患に二次的な腹水貯留のほか、先天性・後天性のPSSを検出できる場合もあります。PSSの影響で発生しやすい膀胱結石(尿酸アンモニウム)の評価にも役立ちます。腹水貯留がある場合、鑑別のため腹水の性状検査も実施します。
当日の流れ
手術当日は絶食で午前中の予約枠で来院していただき、半日お預かりして昼の間に全身麻酔下での造影CT検査と腹腔鏡下肝生検を実施し、問題なく麻酔から回復してくれたことを確認してから退院となります。まれに、動物の状態によっては1泊の入院をご提案する場合もあります。
小さいとはいえ術創があるので、術後は抜糸までエリザベスカラーまたは術後服などで適切に保護していただきます。
検査後のフォローアップ
肝生検の病理組織学的検査の結果が出た時点で、動物のご家族と主治医の先生へ追加のご報告をします。
確定診断が下った後、症例ごとに適切な治療プランを立案します。
慢性肝炎であれば免疫抑制治療、細菌の関与がある場合は適切な抗菌薬、銅関連性肝炎の場合はキレート剤による治療、その他にも根本疾患と動物の状態に応じてサプリメントを含む肝保護剤や食事内容の変更、利尿薬などを組み合わせていきます。
その後、松原動物病院で引き続きケアを実施するか主治医の先生の元でケアを実施していただくかは、紹介元の先生とご家族のご希望に沿って対応しています。
また、場合によりその他の追加検査も実施します。肝臓組織の細菌培養検査、銅定量検査などです。銅定量検査の結果には1ヶ月程度の期間を要することが多いです。
ご紹介の流れ
消化管内視鏡が有用または必要かも知れないと思われる患者様を当院にご紹介の場合は、紹介フォーム(リンクが開きます)にて総合診療科をご指定ください。紹介フォームにより、診療情報を事前にご提供いただくことで、よりスムーズな医療連携が可能となりますのでご協力をお願いいたします。
なお、患者様の来院予約は別途必要です。当日・翌日のご予約をご希望の場合は診療時間内に下記番号までお電話をお願いいたします。2日後以降の日程でも差し支えない場合は、当院初診のご家族様にはこちらの新患様予約申込(リンクが開きます)からご入力いただくようお伝えください。翌診療日に当院よりお電話し新患様の来院予約を確定いたします。
患者様が当院に来院歴がある場合は、ご家族様から当院へ直接ご連絡いただくようお伝えください。
松原本院 ☎ 072-331-3493
大阪府松原市田井城2-1-7
天満橋医療センター ☎ 06-6354-4140
大阪府大阪市北区天満3-2-16