松原動物病院 松原動物病院

学術コラム

総合診療科 2025.06.15
犬と猫の消化管内視鏡

はじめに

犬と猫において、消化管内視鏡検査は数多く実施される検査です。全身麻酔が必要ですが、慢性の消化器症状を患う症例で有用な検査です。また、異物摘出のために内視鏡を用いることももちろん可能です。

 

消化管内視鏡検査の主な適応症

・慢性下痢(2週間以上継続し、食事療法への反応が乏しいもの)

・蛋白漏出性腸症

・慢性嘔吐 ± 吐出

・消化管出血を疑う場合

・食道狭窄・食道内腫瘤を疑う場合

・食道内・胃内異物摘出

・血便・しぶり・直腸/結腸粘膜の腫瘤を疑う場合

 

特に、低Alb血症低コバラミン血症がある場合、体重減少がある場合などには、より早めの検査が推奨されます。

低コバラミン血症は血液検査で確認します。画像は低コバラミン血症を示している検査結果の例で、この症例は葉酸も低値を示しています。

 


画像1:腸リンパ管拡張症を疑わせる超音波所見(犬)。小腸粘膜層に線状高エコーが多数認められる。

 


画像2:画像1の症例で認められた微量腹水(矢印)。

 


画像3:猫で筋層の肥厚を認めた例。炎症なのか低グレード・高分化型(小細胞型)の消化器型リンパ腫なのかの鑑別には組織生検が必要となる。

 

腸の全層生検との比較

消化管を生検する方法には、内視鏡生検の他に開腹手術による全層生検もあります。それぞれ、メリット・デメリットがあるので症例ごとに適切な方法を検討します。ポイントの1つは、病変がびまん性なのか、局在しているのかです。びまん性であれば消化管内視鏡が有用であるケースが多いです。一方で、病変が局所的で、漿膜面の病変を伴う場合や腫瘤(mass)形成がある場合には、病変部の超音波ガイド下FNA(針吸引)・外科的切除生検が有用であるケースが多いです。こうした病変局在の評価のためにも、腹部超音波検査が必要不可欠です。

 

猫では、消化管の粘膜下織や筋層の肥厚が超音波検査上で認められても、組織像が炎症か小細胞型リンパ腫かによらず、筋層には細胞浸潤が認められなかったとの報告があります1)。そのため、病変がびまん性でmassを形成していないのであれば、消化管内視鏡検査・生検が診断に役立つケースが多いです。

 

表1:消化管生検方法の比較

 

生検の診断精度は採取できる組織の大きさに影響を受けることが分かっています2) 3)。そのため、内視鏡検査で適切な診断に至るためには可能な限り太い内視鏡を用い、大きな生検サンプルを数多く採取することが必要です。当院では、2サイズの内視鏡を取り揃え、動物のサイズに合わせて選択していますが、基本的により太いものをできるだけ用いています。

また、採取された検体の取り扱いにも習熟が必要であり、誤った方法で提出すると病理検査結果に差し支える場合があります3) 4)

 


画像3:松原動物病院で使用している消化管内視鏡。

左:細めで小回りが効きやすい。体格が小さい場合や狭い箇所に向いている。

右:より径が太く、鉗子もより太くしっかりしたものを使用できる。大きい検体を採取したり、異物摘出に適している。

 


画像4:松原動物病院で使用している細め、太めの内視鏡にそれぞれ適合する生検鉗子。左(黄色)に比べ右(オレンジ色)の方がサイズが大きいことが分かる。

 

実際の内視鏡検査画像の例


画像5:腸リンパ管拡張症の内視鏡所見。白色の粟粒状に見えるのが拡張した乳糜管であり、主観的には中程度〜顕著な拡張と判断されるが、最終診断は病理組織学的評価に従う。また、併存する炎症や低グレード・高分化型リンパ腫を肉眼的に診断することはできない。

 


画像6:腸リンパ管拡張症の内視鏡所見。白色の粟粒状に見えるのが拡張した乳糜管であり、主観的には軽度〜中程度の拡張と判断されるが、最終診断は病理組織学的評価に従う。また、併存する炎症や低グレード・高分化型リンパ腫を肉眼的に診断することはできない。

 


画像7:胃の幽門部に認められた腫瘤。生検の結果、良性のポリープ(腺腫)であると診断された。

 


画像8:画像7の腫瘤を生検しているところ。

 


画像9:直腸に認められた粘膜部の腫瘤。生検の結果、直腸腺癌であると診断された。

 

消化管内視鏡検査の流れ

まず、初回の診察を受けていただきます。このとき、状態把握としての腹部超音波検査と血液検査、麻酔前検査としての胸部レントゲン検査、必要に応じて追加の尿検査やホルモン検査、外注検査提出を行い、消化管内視鏡検査が必要かつ実施可能であることを確認します。また、消化管内視鏡検査の予定も初回診察時に飼い主様とご相談の上で日程相談をいたします。

 

総合診療科では、基本的に初回診察時には午前中に預かり、昼の診察時間外に各種検査を行い、夕方・午後の診察時間中にお返しをさせていただく形式をとっております。

 

内視鏡検査当日は午前中に預かり、昼の診察時間外に全身麻酔下での検査を行い、夕方(午後の診察時間中)にお返しをさせていただきます。そのため、検査前日の夜は0:00以降固形物を口にすることが無いようにフード皿を下げていただく必要があります。お水は当日来院のために家を出るまで自由に飲ませていただいて構いません。

適切な毛刈りを施して静脈留置を設置、全身麻酔をかけて検査を行います。このとき、下部内視鏡検査が必要な症例の場合は、麻酔下にて浣腸処置を実施します。内視鏡検査・生検がすべて終了したら麻酔から覚醒させます。その後は入院室にて退院までモニタリングします。生検で採取した組織は、病理組織学的検査へ外注いたします。

 

 

病理組織学的検査の結果が出たら、その後はホームドクター様と飼い主様のご希望に合わせて対応しております。当院で治療までご希望の場合は引き続き当院で拝見を、検査のみ当院でご希望で、継続治療はホームドクター様でご希望の場合は、病理組織学的検査の結果が出た時点で報告書をお渡しするようにしています。報告方法はFAXやPDFのEメールによる送付など紹介元病院様のご希望に合わせて対応しております。

 

ご紹介の流れ

消化管内視鏡が有用または必要かも知れないと思われる患者様を当院にご紹介の場合は、紹介フォーム(リンクが開きます)にて総合診療科をご指定ください。紹介フォームにより、診療情報を事前にご提供いただくことで、よりスムーズな医療連携が可能となりますのでご協力をお願いいたします。

 

なお、患者様の来院予約は別途必要です。当日・翌日のご予約をご希望の場合は診療時間内に下記番号までお電話をお願いいたします。2日後以降の日程でも差し支えない場合は、当院初診のご家族様にはこちらの新患様予約申込(リンクが開きます)からご入力いただくようお伝えください。翌診療日に当院よりお電話し新患様の来院予約を確定いたします。

 

患者様が当院に来院歴がある場合は、ご家族様から当院へ直接ご連絡いただくようお伝えください。

 

松原本院 ☎  072-331-3493
大阪府松原市田井城2-1-7

 

天満橋医療センター ☎ 06-6354-4140
大阪府大阪市北区天満3-2-16

 

参考文献:

1) Marsilio S. Differentiating Inflammatory Bowel Disease from Alimentary Lymphoma in Cats: Does It Matter? Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2021 Jan;51(1):93-109. doi: 10.1016/j.cvsm.2020.09.009. PMID: 33187624.

 

2)Goutal-Landry CM, Mansell J, Ryan KA, Gaschen FP. Effect of endoscopic forceps on quality of duodenal mucosal biopsy in healthy dogs. J Vet Intern Med. 2013 May-Jun;27(3):456-61. doi: 10.1111/jvim.12085. Epub 2013 Apr 18. PMID: 23600705.

 

3)Nakashima, K., Kojima, K., Takeuchi, Y., Ito, M., Matsumoto, I., Ushigusa, T., Ohta, H. and Uchida, K. (2025), Factors Affecting the Quality of Histopathologic Specimens Obtained via Small Intestinal Endoscopic Biopsy in Dogs and Cats. J Vet Intern Med, 39: e70059.

 

4)Ruiz, G.C., Reyes-Gomez, E., Hall, E.J. and Freiche, V. (2016), Comparison of 3 Handling Techniques for Endoscopically Obtained Gastric and Duodenal Biopsy Specimens: A Prospective Study in Dogs and Cats. J Vet Intern Med, 30: 1014-1021.